かなり唐突なタイトルで始めます。これが観てきた芝居の題名で、ベタを通り越してシュール感さえ漂います。
『もも −未来へ−』 by 劇団「おかえり」第6回公演
場所:さいたま芸術劇場小ホール
勘のいい方なら大方想像つくかと思いますが、悪人が一人も出てこない教育的配慮が充分に行き届いた演劇です。
この劇団の作・演とおいらは、20数年前とある養成所の同期生でした。地方文化の担い手となった現在の彼女からは、当時の可憐な面影は消え失せ、心身ともに逞しくなった姿は感嘆もとい感慨もひとしおです。
内容は、定時制高校の生徒と教師が問題のある転校生の処遇をめぐって紛糾。だが、転校生(女子)の辛い過去を知り、全員が一致団結して彼女の心を開かせるというストーリー。
でも、いいお話といい芝居は別物ですから。両方がシンクロしている場合もあるけれど、今回はいわゆるヌルイ芝居で、表現を追求する姿勢は感じられません。
まさに予定調和の典型です。10数人の登場人物がいて、口論程度はあるにせよ、何ゆえぶつかり合わないのか。
キャラクターを描き分けてはいるけれど、敢えて登場させない人間像がある。作家(劇団)が忌み嫌っている人間のタイプが見えてくる。
何を怖がっているのだろう。その根底には、壊してはいけない(と考えている)とても大事なモノが見え隠れする。
だが、表層的な善意が必要なのは日常生活の方ではないか。芝居は創作である。異分子同士がぶつかり合う摩擦熱や、眼に見えない感情の吐露が引き起こす化学反応の中にこそ、サブタイトルにもなっている「未来」に続く人間関係が浮かび上がってくるのではないだろうか。
かなり辛らつになってしまったが、その要因は開演前に遡る。客入れ中に、物語のイントロめいた事を舞台で役者を使って行った。
前説でもない。開演時間前であり、客が座席を探したり、トイレに行ったり、ベチャクチャしゃべくっている最中に、「見ても見なくてもいいですよ」というスタンスのものだ。確かに、お客をフィクションの世界にいざなう事は難しい。
だが、効果がありそうなことは何でも良しとする品性は鼻白む。ストリートライブなら見たい者が足を止めればいいが、舞台は見るという前提がある。
見ても見なくても良い物を舞台上で行うという神経、そのお気楽さに苛立った。
とは言っても、定期的に公演を続けることには敬意を表します。何より大変なことは継続だから。ぜひ、これからも頑張ってほしいので、敢えて苦言を呈した次第です。
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